2008年7月24日木曜日

アーカイブ形成が拓く文化-アーカイブ・ビジネスの可能性-

 2007年4月から2008年3月までの1年間、検討班長の私は、KBS京都のテレビ経済番組にゲストとして、時々出演していました。KBSの担当者曰く、「数千人が観ています」ということで、実際に多くの知人から「テレビに出てましたね」と言われ、多くの方が観ていることを実感しました。教室で講義をしたり、学会で発表したり、論文を書くというのが仕事である大学教員にとって、「限られた時間で視聴者に判りやすい一言」を言うのはなかなか大変な仕事でした。テレビカメラの向こうには、数千人の視聴者がいること、限られた放送時間という制約の中で黒板も配付資料も無しでその視聴者に判ってもらうこと、そこがテレビの面白みであり、凄さなのだなと感じながら関わらせてもらいました。
ただ、テレビの弱点は、放送時間が決まっていること、見逃したり、録画し損ねると観ることができません。YouTubeのような動画サイトやwebテレビが、今日のように隆盛してくると地上波テレビの戦略は如何にあるべきかと考えたりしました。

そのようなことを考えているときに、『【ad:tech速報】テレビ局の逆襲、高品質番組とWeb2.0機能で勝負するNBCの「Hulu」』と言う記事が目に留まりました。この記事では、NBCとFoxが共同出資で立ち上げたhuluが紹介されており、その中でこの事業が立ち上がった「背景には「YouTube」の成功で、動画配信・共有サイトが強化されつつあること。また、YouTubeにテレビ番組の海賊版が上がる理由は、オンラインのほかの場所でそれらの番組を見られないからであることをテレビ局も気がついたからだろう」と書かれています。放送だけにとどまらず、webを通じた配信により、「観たいときに観ることができる」を実現し、テレビの放送時間の弱点を克服しようとしているようです。高品質のコンテンツを制作し、放送だけでなくwebを通じて、放送の制約を離れて、見たい人に提供するそういった放送と通信の融合が進んでいます。今年の北京オリンピックには、民間テレビ放送局が共同で立ち上げた「民放テレビ北京オリンピック公式動画」 というweb siteもあり、我が国でも放送と通信の融合は進みつつあります。

 また、最近しばしば耳にすることでありますが、例えば、ある写真を反復して観たい人は100万人に1人程度かもしれないが、その数は、世界で集計すれば、数千人に達し、数千人の人が繰り返し見たい資料を保持するということが、それだけで経済価値を持ち、新たなサービス・イノベーションの母胎になりうるともいえます。従来はビジネスとは正反対と考えられていたような資料にこそ、新鮮なビジネスの可能性が秘められています。つまり、アーカイブズを形成することが、新しいビジネスや発想の源泉となる可能性を秘めていることになります。

2008年7月23日水曜日

教える経験

 サービス・イノベーション人材育成事業の中に「教える経験100人計画」というのを盛り込んでいます。100人の学生が、他の学生に教える経験をするというものです。学生集団の中に様々なノウハウの蓄積を進め、先輩が後輩に知識を伝達していく仕組みを確立しようとするものです。このアイデアは、思いつきの打ち上げ花火でも、降って湧いたて出たものでもありません。本学部の教育改革・教育実践の中から出てきたアイデアです。
 滋賀大学経済学部では、2004年度に大幅なカリキュラム改定を行い。コア科目「ミクロ経済学A・B」「マクロ経済学A・B」「統計学A・B」「コア政治経済学」「社会経済史」「経営学」「簿記会計A・B」「法学」「科学方法論」の学部専門共通科目を導入しました。更に、「A・B」セットになっている「ミクロ経済学A・B」「マクロ経済学A・B」「統計学A・B」「簿記会計A・B」の4科目については、講義の理解を深めるために「コアセッション」を開講し、問題演習を行う時間を設けました。このコアセッションでは、教員が作成した演習問題をTA・SAが解説します。このTA・SAですが、主に学部学生(SA)が主力であり、年間延べ60名以上の学生が教える経験を積んでいます。この教える経験が、学生の様々な能力を格段に引き上げています。教える経験の実践の詳細については、下記の学習支援室の取り組みを参照してください。

陵水学習支援室の取り組み

番外編
○日経ビジネスonLine 茂木健一郎の「超一流の仕事脳」
 NHKテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏の番組に連動したコラムが、日経ビジネスonLineに連載されています。この茂木氏のコラムで中学校教師の鹿嶋真弓先生の話(2007年4月3日放送)は興味深いものがありました。教育の現場だけでなく、組織の在り方にも示唆深いと思いました。
◆茂木健一郎氏コラム「成果主義と相互扶助は両立する」~中学教師・鹿嶋真弓~2007年4月3日放送

○NHKテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」←番組ホームページ
「人の中で 人は育つ 中学教師・鹿嶋真弓」←第46回(2007年4月3日放送)

滋賀エグゼクティブ・プログラム

 滋賀大学では、2007年より滋賀エグゼクティブ・プログラムを実施しています。この事業は、(社団法人)滋賀経済産業協会滋賀大学産業共同研究センターの共同事業として行われており、特に革新的ビジネスプランの策定を目指した教育研修プログラムを編成しました。そして、次期経営幹部候補者を中心に16名の参加をえました。

2007年度の概要について下記を参照してください。
「産業共同研究センター報 No7」にリンクしております。
産業共同研究センターの報告
受講生の報告
講義担当教員の報告
(社)滋賀経済産業協会の報告

びわ湖環境ビジネスメッセ

 2008年11月5日(水)から7日(金)の3日間、長浜ドームをメイン会場に「びわ湖環境ビジネスメッセ2008」(滋賀環境ビジネスメッセ実行委員会主催)が開催されます。「びわ湖環境ビジネスメッセ2008」は、今年で12回目を迎え、国内最大級の環境産業見本市に育ってきました。滋賀大学は、この「びわ湖環境ビジネスメッセ2008」の主催者である滋賀環境ビジネスメッセ実行委員会のメンバーとして、毎年、パネル展示と協賛セミナー開催で参加してきました。
 本年度も出展を予定しており、現在、協賛セミナーを企画中です。サービス・イノベーション検討班長もセミナー企画委員の一人として、サービス・イノベーションにも関わる魅力ある企画作りを思案中です。

2008年7月21日月曜日

イノベーティブな「心の習慣」

申請内容について気の向くままに解説をします。今回のテーマは、『イノベーティブな「心の習慣」』です。

この『イノベーティブな「心の習慣」』とは、「新しくしていこう、新しいものを見付けよう、新しいものをつくろうという心の習慣」という意味ですが、「心の習慣」という言葉自体は、ベラー他編『心の習慣』みすず書房(1991年) と言う本のタイトルからヒントを得ました。この事業の特徴を良く表す言葉であるとして、事業名に盛り込み、申請書の中でも使った言葉です。

更に、この本のタイトルである『心の習慣』は、トクヴィル の『アメリカのデモクラシー』(岩波文庫)[講談社学術文庫からは『アメリカの民主政治』のタイトルで出版]に出てくる言葉です。

ベラー他編『心の習慣』(みすず書房)は、200人を超えるアメリカ人にインタビューを行い、アメリカ個人主義を析出するもので、「個人は社会から切り離された絶対的な地位を持つとする功利主義的個人主義と表現的個人主義」を批判し、「社会に根を下ろした倫理的個人主義」を支持、擁護する立場の研究書です。

申請書で使った『イノベーティブな「心の習慣」』の意味するところは、「新しくしていこう、新しいものを見付けよう、新しいものを創ろうという心の習慣」ですが、この言葉には、ベラーらの著書のことも踏まえて、付加的な意味も込めて使いました。

 2002年3月20日付け朝日新聞(夕刊・水曜科学)に、「ノーベル賞100周年フォーラム 創造性を生む秘密を探る」と言う記事が載っています。その記事の中で、シャーウッド・ローランド教授(米国カリフォルニア大学・1995年ノーベル化学賞)が、“創造性について、常に何か新しいこと、他と違うことを見付けようとする姿勢が重要」と述べ、、「日本では『出る杭はは打たれる』と言う諺があるが、そのような雰囲気では創造性は生まれてこない」と指摘”しています。イノベーティブな心の習慣は、「新しいことを見付けようと言う姿勢」と「創造性が生まれる環境をつくろう」という二重の願いを込めた言葉です。

イノベーションをおこすイノベーターの養成だけでなく、イノベーターがイノベーションを進められる環境をつくるなど、イノベーターをサポートする人材も必要であると考えました。また、そのサポートする人材もイノベーティブな「心の習慣」が必要であろうと考えたわけです。つまり、イノベーションをおこす組織やコミュニティを積極的に創っていく倫理的な主体(志と能力を持った人材)を養成する意図も込めた言葉でした。イノベーティブな「心の習慣」と言う言葉は、重層的な意味合いを持っているのです。
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